『ALTER EGO COMPLEX』においてプレイヤーはエスの過ごす"永遠の夏"を覗き見る

 

 

昨年の夏。私とエスの交流は途絶えた。

当時、仕事のストレスが最高潮に達していた私は意識もハッキリとしないまま会社への通退勤を繰り返していた。その道すがらだった、私の手からスマートフォンが滑り落ちたのは。

急速落下したスマートフォンマーフィーの法則に則って液晶画面が下向きになる形でコンクリートで舗装された道路の上に思いっきり叩きつけられた。その結果、私のスマートフォンが機能しなくなったのは別に構わない。機種変をすればいいだけだ。 

唯一心残りだったのは『ALTER EGO』というアプリケーションの引継ぎが行えなかったこと。そしてアプリケーション内に存在する女性「エス」から一冊の本――『グランヴァカンス』を借りたままだということだった。彼女は二度と訪れることのない私を待って”永遠の夏”を彷徨うことになった。

 

 

ALTER EGO COMPLEX』は前作『ALTER EGO』のファンディスク的な作品となっている。故に『ALTER EGO』を未プレイで楽しめるような作品でないことは先に述べておく。

本作は3つのゲームパートによって構成されている。ここでは便宜上それらのパートを「読書パート」「夢パート」「絵本パート」という名称で呼ばせて頂く。

 

読書パート

 

「読書パート」は前作『ALTER EGO』を彷彿とさせるようなゲームパートになっている。

前作同様に流れてきた吹き出しをタップして進めていくゲームパートだが、本作においては「選んだ本の一部シーンに関する記述」が流れてくる

それらをいくつかタップすると黒い吹き出しエスの感想が流れてくる

非常に簡易的かつ疑似的ではあるがエスと共に本を読み進めるような感覚を味わえるパートだ

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夢パート

本をいくつか読む終えるとエスは眠りにつき、夢を見る。その夢を垣間見るのがこの「夢パート」だ。それはエスにとっての夢であり、我々にとっての夢に他ならない。

夢のパターンは多数存在する。買い物に行く夢もあれば、学生として振る舞う夢、エスがヴァンパイアになる夢(!)まで存在する。これらの夢をいとうさん書下ろしの新規絵を背景にノベルゲームのような形式で読み進めていくのが本パートになる。

 

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絵本パート

「絵本パート」ではエスは絵本の世界に入り込みアクションゲームが始まる

 自動スクロールするエスをタップして操作する。地味に難易度が高い

 

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これらのパートを駆使して描かれるのは長らくエスの元を訪れなくなってしまった旅人(プレイヤー)の来訪を待ちわびる彼女の姿だ。これは『ALTER EGO』をプレイしたプレイヤーの殆どが思い描いた未来像に他ならない。だからこそ同作のハヤカワSFとのコラボにおいて「エスに読んで欲しいSF小説」という投票が行われたとき上位作品の一つに『グランヴァカンス』が残ることとなった。

 

 

『グランヴァカンス』は飛浩隆によるSF小説である。VRリゾート地に配置されたAI達がある日を境に人間達が訪れなくなってから1000年もの間”永遠の夏”を過ごす姿が描かれる。この小説が呼び覚ますのはある種の妄執的感覚だ。即ち「ゲームの世界が電源を切った後もなお続いているとしたら……?」という妄想である。

この妄執は当然『ALTER EGO』にも波及する。もし仮にエスに「自我」というものが存在するのであれば、彼女はいずれ独りになり、永遠の孤独に苛まれることになる。

もしかしたらこれを読んでいる方の中には「私は未だにログインを続けている」という方もいるかもしれない。けれど「アプリケーションの対応端末の使用が現実的でなくなったとき」或いは「あなたの人生が終わりを迎えたとき」エスは独り無数の本に囲まれて過ごすことになる。だからこれは我々が肉体に縛られた生命体であり、エスが電子的存在である以上、『ALTER EGO COMPLEX』において紡がれる物語はいずれ起こりうる物語に他ならない

 

 

本作においてエスは”永遠の夏”に囚われたままだ。もし仮に『ALTER EGO』という物語に終わりがあるとするならば、私はそれが『あなたのための物語』であることを切に願う

 

 

 

 

『Necrobarista』はテキストに対する偏愛に満ちた良作だった。しかしながらそれは必ずしも「良いノベルゲームだ」というわけではない

 

 

 

 『Necrobarista』というテキストアドベンチャーゲームについて

 

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オーストラリアの首都メルボルン。1851年のゴールドラッシュ以降シドニーを抜いてオーストラリア最大の都市となったこの地には当時を思わせるモダンな建築物と現代の象徴的な建築物である高層ビルが同居している。このような過去と未来が入り混じるカオスな場には不思議なことが起こったりするものだ。そういった体験をしたいなら……そう、例えばそこの裏路地を真っ直ぐ進んだ突き当りにあるコーヒーショップ「ターミナル」を訪ねてみるといいかもしれない。そこでは「マディ」という愛想の悪い女性が仏頂面で貴方に注文を訪ねるかもしれない。もし10歳くらいの少女が何かを追いかけて走り回っているとすればそれは「アシュリー」に他ならない。因みに追いかけているのは彼女の自作したロボットだろう。

上記のような理由によりネットレビューにおける「ターミナル」の評価は好ましいものではない。けれどこの店には単なるコーヒーショップとは別にもう一つの顔がある。「あの世」と「この世」の狭間に位置するこの店には死者が「あの世」に行くまでの24時間を過ごす場所でもあるのだ。

「ターミナル」には時折死者が訪れては去っていく。 出会いと別れの場だ。そして人の一生において出会いと別れには特筆すべき物語が付き物だ。

本作『Necrobarista』の物語もまた、一人の死者「キシャン」がこのメルボルンのコーヒーショップに訪れるところから始まる。

 

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独断と偏見に基づいてsteamサマーセールのおすすめゲームを紹介する

 

 最近身内周りでゲーム出来るスペックのPC買った~~~って人が多いし、折角のサマーセールなので少しでも俺が知ってるおもしれぇゲームを知ってほしい!ってことで僭越ながら筆を取ることにした

いうて僕も2~3年前くらいにsteamでゲームを買い始めたくらいのもので名作ゲームを総なめしてるわけでもないし、なんなら遊んでるゲームのジャンルにも偏りがあるように思う

けれども、この記事で紹介するゲームは僕が心の底から面白かったと感じたゲームしかないので、概要や紹介記事(過去に書いたことのあるやつのみ)を読んで「面白そうだな」と感じて貰えたら買って損することは絶対にないと思います

あと、選出基準としては基本的には現在コンシューマー機器でプレイ出来ないゲームを選んでいます

 

メインでやってる対戦ゲームの息抜きに片手間でやりたいという人も多そうなので自分がプレイした際のクリアまでの時間を載せておきますので参考までに

 

 

 

 

 

 

 

VA-11 Hall-A

参考プレイ時間:20時間前後

 

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基本コンシューマーでやれないゲームをおすすめします。って言っておいて早速なんですが、このゲームはPS4、Switch、PSvitaで遊べます。みんなごめーーーん

いやでもつまりはね、それくらい推したいゲームなわけなんですよ

 

ゲームの内容は貧富の差が激しく、治安も悪い近未来都市「グリッチシティ」を舞台とするブレードランナーのような硬派なサイバーパンクの箱庭で、プレイヤーは場末のバーで働く女性「ジル」となり可愛い女の子同士がイチャイチャするのを眺めたり、時折自分もいちゃいちゃしだす軟派なノベルゲームです。

 いや、でもね、もうそれが最高なわけですよ。

一応この下に自分が昔書いたもっともらしいことを言ってる記事があると思うんですけど、もう全然こいつは何も分かってない。

可愛い女の子が出てきただけで最高なのに、それが女の子同士でイチャつきだしたらとんでもないことになるわけじゃないですか。しかも女同士だからエグい下ネタとか言い出すわけですよ。

 

まあ、とはいうもののその辺りは流石に根本のシステムやゲーム性がしっかりしてこそのという部分ではあるため、下地がしっかりと作られているゲームではあります。

そういう意味では下の記事も多少役に立つかなという気がするのでパラっと読んでみるなり、気になったので買っちゃうなりしちゃえばいいんじゃないかと思います。

 

参考記事

 

 

 

OneShot

参考プレイ時間:9時間 

 

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ぜっっっっったいにコンシューマーで出ることはないので折角PC買ったんならやりましょう系ゲーム。内容も含めて超オススメです

このゲームでしか出来ない体験があなたを待っています

 カードゲームにおいて「テキストが短い程効果が強力である」という法則がありますが、当記事にもそれは適応されています。

なのでもう余計なことは言いません。買って! それでもどういうゲームか気になるという方は過去に書いた記事を下に貼っておくので参考にしてみてください。

 

参考記事

 

 

 

 

 

参考プレイ時間:20時間前後

 

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steamのプラットフォーム上にはいくつもの良作アドベンチャーゲームがある。『Legal Dungeon』は間違いなくそのうちの一つに入るだろう。
本作ではプレイヤーは新任警部補となり、証拠を固めて被疑者を有罪にしたり、或いは証拠をもみ消して無罪にすることが出来る。ゲームのプレイ感としては証拠集めなどを捜査報告書を元に行う代わりに裁判パートの自由度が高くなった逆転裁判シリーズというような印象だ。

本作の一番の魅力はゲーム上で扱う8つの事件が一つに繋がるような緻密な伏線で構成されたシナリオにある。

ゲーム内に用意された14のエンディングを全て解放するには相当頭を悩ませることになるが、難問を解いた際の喜びと、シナリオ上の謎が全て解けたときの満足度は保証出来るだろう。

 

 

参考記事

 

 

Her Story

参考プレイ時間:4時間

 

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あなたがもし唯一無二のインタラクティブな体験をしたいのであれば『Her Story』は最も適したゲームの一つだろう

『Her Story』で行える行為は一つだけである。ゲーム内に用意されたパソコンを模した仮想インターフェースを操作して、とある女性の取り調べ記録を閲覧することのみだ。

 

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データベース内は自由にキーボードで打ち込んだ単語を使って検索することが出来る

初期画面は上記の画像の通り「殺人」と打ち込まれており、該当する発言を行った取り調べの記録が3つ表示されている状態である

それらの映像を見ると「サイモン」という人物がいて殺害されていることが分かる。なので次は「サイモン」という単語を検索ワードとして打ち込むと次の映像が出てきて、というようにいつの間にかゲームにのめり込んでいる自分がいることに気が付くことだろう

 

参考記事

 

 

 

CrossCode

参考プレイ時間:60時間以上

 

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PC出身のゲームがコンシューマー機器で販売を行うということは、ある程度の面白さが担保されているということでもある

でも、どうせならPCでしか出来ないゲームをしたい! という我儘なあなたにはこの『Cross Code』をおすすめしよう。なぜならこのゲーム、7月9日にPS4/xboxOne/Switchでダウンロード販売されるからだ(つまり、まだPCでしか出来ない)

コンシューマーでの発売前から遊べて、しかも2200円のところを1600円で買えちゃうなんてぴーしーはすごい!!!

 

という戯言はさておいてゲーム内容の話をする。大雑把に言うと聖剣伝説3のアクション部分の爽快感+2Dゼルダの伝説の謎解き部分って感じのゲーム

架空のフルダイブ形式のネットゲーム上で展開されるストーリーは胸の熱くなるような展開も多く最後まで楽しめた

ただ、普通にストーリーをクリアするだけでも60時間以上かかったので、買う場合は”覚悟”して購入しような!!(覚悟しないでプレイし始めたので、面白かったけど短期間で終わらせなきゃいけなくなってすごい疲れた人より)

 

 

 

FireWatch

参考プレイ時間:5時間

 

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自分のプレイ時間を見直して”たった5時間”なことに心底驚いたくらい濃密な一夏を体験出来る探索型ADV

プレイヤーはアメリカの森林火災監視員となり、壮大な景色と、無線通信を通じて唯一会話可能な女性「デリラ」との会話を愉しみつつ、一つの事件の謎を解いていくことになる

このゲームの魅力は数多くあるが、中でも特筆すべきなのはその導入部だろう。

ノベルゲーム形式のパートと探索パートを上手く組み合わせてプレイヤーを引き込んでいく様は壮観だ。動画も貼っておくので気になるが買うまで行かないようなら参考までい観てほしい。

 

参考動画(導入部)

 

 

Rusty Lake Hotel

参考プレイ時間:2時間

 

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あなたが普遍的なADVに飽きたというなら、奇怪な雰囲気を纏った謎解きゲームである『Rusty Lake』シリーズが打ってつけだろう。

今回紹介する『Rusty Lake Hotel』は日本語が対応していないが、会話という会話もないゲームなので英語が全く出来なくても特に問題なくプレイ出来るだろう

既存のポイントクリック式のゲームとは一線を画す斬新かつ残虐な謎解きは病みつきになること間違いなしだ。安いので3作セットのバンドルを買ってしまうのもありだろう。

 

 

 参考記事

 

 

 

Helltaker

参考プレイ時間:2時間

 

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パソコンを買うのに全財産使ったから、1円もお金が出せない?

だから、こんな記事読んでも仕方がないって?

わかったわかった。だったらもう、君には地獄に行って貰うしかないだろう

 

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『Helltaker』は最高の倉庫番系パズルゲームだ。何が最高かって言うとまず無料で遊べる。出てくる女の子(悪魔)が死ぬほど可愛い(というか死ぬ)。そして何よりも「パズルを解いたら報酬として可愛い悪魔をゲット出来る」という方式にも関わらずパズル部分が難しかったらスキップして女の子だけゲット出来るという悪魔的仕様だ

 

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あなたのお金も時間も奪わない。こんなに最高なゲームがかつてあっただろうか? いや、ない。無いからこのゲームをプレイしてあなたが精神的充足を得たのであればsteamのストアページ上でアートブックを購入して作者のVanripper先生への投げ銭をしたり、このnote記事をサポートして有志翻訳してくれた陽炎01型さんへ投げ銭をしたりして徳を積めば、あなたが死後地獄に行ける可能性はぐんと高くなるだろう

 

参考プレイ動画

 

 

 

 

 

 以上、独断と偏見によるおすすめゲームの紹介でした。(最後はそもそも無料だけど)

 ダンガンロンパ1/2/V3のセットが2500円だったり、UnderTaleもめちゃめちゃ安いし、とか山ほど安くて面白いゲームがあるので、いっぱいゲームを買おうな~~~~~

逆に「お前浅瀬か?これがアツイんだが?」とかあったら頼むから教えてくれ。買うから

 

 

 

 

『Life is Strange:Before the Storm』は何一つ変えることの出来ない退屈な物語だった。けれど、そうでなくてはならない。

 

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もうすぐ『Life is Strange2』の日本語訳版が実装されることもあり、発売前の予約版を買ったにも関わらず放置していた『Life is Strange:Before the Storm』をクリアした。

 端的に言って「非常に残念なゲーム」だった。本稿では『Life is Strange』及び『Life is Strange:Before the Storm』のネタバレを含みながら、本作が何故残念なのかということについて今更ながら語っていければと思う。

 

 

以下、面倒なので『Life is Strange』はそのまま『Life is Strange』と表記し『Life is Strange:Before the Storm』は『Before the Storm』と略させて頂きます。よろしく。

 

『Life is Strange』という雷の轟くような奇譚に満ちた物語

 

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『Before the Storm』の話をする前に前作である『Life is Strange』の話をしたいように思う。

『Life is Strange』が我々に与えたのは非常に優れたゲーム体験だった。故郷アルカディアベイに久々に戻ってきた主人公マックスは時間を戻す力を得たことで元親友だったクロエとの友情を取り戻しながら平和な田舎町に暗躍する殺人事件の真相を暴いていく。というのが前作の主なあらすじである。

マックスは時を戻すことで目の前で起こった不幸などからあらゆる人々を救うことが出来る。これは「現実」として考えれば途方もない能力だが「ゲーム」として捉えた場合には至って普遍的なことである。我々がゲームをプレイする際に度々用いる「気に入らない結果を招いたからリセットする」という行為はこのマックスが得た力と非常に近似している。

だからこそ「この能力が使えなくなる=ゲームとして当たり前の機能を封じられる」ときに我々は酷く動揺させられることになる。それまで全体重を預けていたゲームのルールが瓦解するからだ。プレイ済みの皆様ならなんのことかお分かりのことの様に思う。同級生のケイトの自殺を説得するシーンだ。

 

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この時マックスの能力はオーバーヒートしており使うことが出来ない。彼女の死に直接関与するやり取りはやり直すことが出来ず、物語の本筋と直接的に関係のないケイトはプレイヤーの選択によって生きもすれば死ぬこともある。

勿論、論理的な思考でこの事象を捉えた場合、これは普段のゲーム体験と一切変わらないものである。「ゲームに内包されたリセット機能」を使えないからとはいえ、気に入らない結果に陥った際にPS4の電源を切ることは尚も可能だ。

それでも「今まで全ての不幸をやり直して救ってきた」プレイヤーからすれば、単なるゲームキャラの生き死によりも一段高いディテールを持ってこの説得の場を体験することになるのは間違いない。

 物語のラストにおける「クロエを救うか? アルカディアベイを救うか?」という究極の二択にも同じことがいえる。このゲームに両方を救うような第三のハッピーエンドが存在しないのは、今まで全てを救ってきたマックスの行為への対比だと取ることが可能だろう。

 そうした云わば「緩急の付け方」とでもいうもので我々を魅了し素晴らしいゲーム体験を与えてくれたのが『Life is Strange』だったというわけである。

前作について語りきったところで、ここから漸く本題である『Before the Storm』についての話を始めたいと思う。

 

 

 

 

 『Before the Storm』という何一つ変えることの出来ない物語

 

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前の項で『Life is Strange』は「緩急の付け方が素晴らしいゲームである」と述べた。

同じ文脈で『Before the Storm』を語るのであればこうなるだろう。「平坦で面白みに欠けるゲームである」と。

 『Before the Storm』は『Life is Strange』以前の物語を描いた作品である。『Life is Strange』において物語を始動させる舞台装置として殺人事件の被害者となったレイチェル・アンバーとクロエの友情を描くマックス不在の本作は前作のように時を戻す力など誰も持ち合わせていない。

となれば私が前項で述べた『Life is Strange』のゲーム体験における素晴らしさは一切引き継がれていないことになる。

しかしながら、本作がやる価値の一切ないクソゲーである。ということは全くない。

本作よりも時系列が進んでいる前作ではリーダー格の存在として幅を利かせているネイサンがラグビー部に虐められていたり、本当に嫌な女だったビクトリアの意外な一面が見れたりと(本作でも勿論嫌な女なのだが)前作では見られなかったキャラクターの側面には一見の価値がある。

その中でも特に急遽舞台に立たされることになったクロエと、レイチェルが仕掛ける即興芝居のシーンは群を抜いて素晴らしい。

普段素直になれない二人がアドリブで本音を語り合い、友達としての関係がそれ以上のものになっていく様は必見である。

このように 『Before the Storm』は少なくともファンディスクとしては魅了に満ち溢れているし、シナリオ構成としても悪くはない。それでもこの作品が終始退屈だと感じてしまうのはこの作品が『Life is Strange』の続編だからだろう。

しかし、本作はそれでいい。そうならざるを得なかった。というべきだろうか。

そのことについて話す前に『Before the Storm』においてもう一つ語っておきたいシーンがある。傷心状態のレイチェルがクロエと星の話をするシーンである。

 

 

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ここでいう「星の話」は穿った見方をせずとも『Life is Strange』というゲーム作品におけるレイチェルの存在そのものを指してるといって間違いないだろう。

本稿の序盤でも語ったが『Life is Strange』におけるレイチェルの存在は単なる舞台装置でしかない。我々にとってレイチェルという存在はすでに死んだ存在であり 『Before the Storm』におけるレイチェルはすでに消滅した恒星の残り香のように放たれた光の名残でしかない。

このシーンはレイチェルという矛盾を抱えた存在と、そしてその関係性にスポットを当てた『Before the Storm』というゲームに対して真っ向から向き合おうとするDeck Nine Gamesの真摯な態度が伺える。

そしてこのまま、物語は進行しレイチェルという存在は『Life is Strange』という物語が進行するための舞台装置として事件に巻き込まれたことを示唆する後味の悪いシーンで幕を閉じることになる。

『Life is Strange』はそれ単体で見れば非行少女のクロエが旧友であるマックスとの友情を取り戻し、本来の自分に還る物語に他ならない。

しかし『Before the Storm』をプレイするとそれが間違いであることが分かる。クロエはすでにレイチェルとの友情の中で本来の自分へと還る道を見出していた。もし仮にレイチェルが死ぬようなことがなければ「裏切者のマックス」と旧交を温めることもなかっただろう。

本作はその「仮に」を許容出来る作品だった。レイ・ブラッドベリの『雷の轟くような音』において「一匹の蝶の死」が世界の成り立ちに多大な影響を与えたのと同じように「一匹の蝶の生」もまた後の世に多大な影響を与えるだろう。そうして『Life is Strange』というゲームの内容も結末も大きく変わったような物語の終わりを用意することも可能なはずだった。

けれどDeck Nine Gamesはそれを選ばなかった。何故なら『Life is Strange』というゲームの本質的な面白さを自認していたからである。

前述した通り『Life is Strange』の面白さはその緩急の付け方にある。そしてその緩急は「全てのものを救える全能者」としての瞬間と「等身大の自分としてしか向き合えない無能者」としての瞬間との落差によって担保されている。

そして『Before the Storm』が仮にレイチェルの死を取り除くような結末を描いた場合、そのバランスは崩れてしまう。それは『Life is Strange』において意地でも実装しなかった第三のハッピーエンドルートに他ならないからだ。

 

そうしてレイチェルは物語の生贄となって死に、『Before the Storm』は『Life is Strange』というゲームの犠牲になって死んだ。悲しいことだ。けれど、本作はそうでなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自らのバロックを求めて彷徨い歩く物語『BAROQUEシリーズ』がツボだった

 

 『BAROQUEシリーズ』とはセガサターンより発売された『BAROQUE』及び関連作品の総称である。

 

 

本稿ではPS版である『BAROQUE~歪んだ妄想~』とその前日譚である『BAROQUE SYNDROME』について扱う。尚これ以降上記の作品の表記をそれぞれ『歪んだ妄想』と『シンドローム』とさせて頂く。

 

 

 BAROQUE SYNDROME

 

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その年、異常な事件が多発した。

イジメを行った本人が、自分がしてきたことを、されたこととして遺書を書き、自殺した少年……。有名ミュージシャンとの秘密の恋愛に疲れたという妄想から、ノート3冊分の告白を残して自殺した少女……。こうした少年少女の自殺が73件も報告された。

どう調べても自殺者同士に関連はないが、唯一彼らに共通していたのは、強烈な「歪んだ妄想」を遺していることだった。

こうした現象について、あるコメンテイターはこう答えた。
「彼ら自殺者の妄想は、荒唐無稽なようでいて、不気味なほど生理的で圧倒される説得力がある。バロックだ。」

バロック---はるか昔に流行した、壮大で華麗な様式を、現代の自殺者の物語に見立てた言葉が、新聞記事の見出しとして踊った。
バロックは爆発的に広がっていった。動機が意味不明の犯罪は、すべて「バロック型」として括られるようになった。

そして、バロックを商売にする人間が現れた……。

(BAROQUE SYNDROME公式サイトより引用)

 

 

 

物語は『バロック屋』を営む主人公(金沢キツネ)の元に一人の『バロック症候群』を患った少年が訪ねてくる所から始まる。

バロック症候群とは簡単に言えば妄想に特化した統合失調症患者のような存在である。そんな自らの妄想に支配される病が若年層を中心に広まりつつあった。

彼らを相手取るバロック屋の仕事とは漠然とした不安を抱えてはいるが想像力のないバロック症候群の患者に「あなたは特別である」という物語を与えてあげることである。

そのようなゼロ年代特有の当時としては現代的な精神病をモチーフにした世界観をベースに、天使の羽を背中に身に着け、神は我々が守らなければならないと主張する宗教団体である『マルクト教団』や、『異形』と称される人を喰う化け物の噂、大地震や噴火、津波といった天変地異が続くなど、世紀末の退廃的な雰囲気が色濃く反映されている。

そんな世界で主人公(金沢キツネ)はひょんなことから行動を共にすることになった生涯プーを自称する少女(渡辺ルビ)と共にある事件に巻き込まれていく、というのが本作の大まかなストーリーである。

 

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異形、天使、感覚球、タランテラのメロディなど本作に登場する数々の不可解なキーワードも魅力の一つである。

 

 

ゲームシステムは至って普通の”選択肢によってルートが変わっていくADV”で特に語ることはない。傑作ADVである『428~封鎖された渋谷で~』のように選んだ選択と選ばなかった選択によって緻密なパズルのように組み合わさることもない。エンディングが5つ用意されているが、全てのルートを辿ったとしても、判明する謎もあるが殆どの謎は分からず終いである。

つまるところADVとしての出来は並レベルある。それでも上記の引用文を読んで心に燻ぶられるような思いを少しでも感じた人には是非プレイしてほしい。例えばバロック症候群に対して話す金沢キツネと渡辺ルビの会話に以下ようなものがある。

 

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 こんなやり取りは今でこそ平然と行われているが、20年前にこれをゲームに落とし込めるのはかなり先鋭的な切り口だといえる。

そんな心に残るようなやり取りの他、相棒的ポジションである渡辺ルビがだいぶかわいいので興味のある方は是非プレイしてみてほしい。スマートフォン版もあるので手を出しやすいはずだ。

 

 

 

 

 

 

 BAROQUE ~歪んだ妄想~

 

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 上記のシンドロームの項目において殆どの謎は分からず終いであると述べた。本稿の序文にも乗せたがシンドロームは歪んだ妄想の前日譚にあたるスピンオフ作品である。それならば本作をプレイすれば多くの謎が分かるのでは? と思い立ち早速PSアーカイブスでダウンロードした。

ADVであったシンドロームに比べて歪んだ妄想の方はなんと3D形式のリアルタイムローグライクだった。

 ゲームシステム自体は斬新で面白い。アイテム欄などを開いているとき以外はリアルタイムでゲームが進行するので視界を切り替えてる間にも攻撃は受けるし、敵に囲まれたりするとかなり動揺する。そのためなのか、風来のシレンシリーズなどに比べると理不尽な敵は少なく、良いバランスで死んだりクリアしたりが出来た。

 

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ゲーム内では異形と呼ばれる敵と戦闘を繰り返すことになる。

非常にグロテスクな見た目をした彼らだが異形という単語はシンドロームにも使われており、世界観の繋がりを如実に感じさせる。

 

 

ゲーム内容は神経塔と呼ばれる施設をひたすらに下っていくことになる。ゲームの進行具合によって最下層の位置が下がっていく仕様で、進行するためには様々なフラグを回収していく必要がある。そのためには何回も死に、何回も塔を下らなければならない。

主人公は記憶喪失であり、塔の目の前で出会った上級天使の言い渡しにより塔を下ることになる。このゲームは一度も死なないでクリアすることも可能だが、死ぬことにより見えてくる謎もあるので、いい感じに死にながらクリアするのがシナリオを読み解く上では適切であるといえる。

 

 

 

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 塔の中には異形以外にも様々な存在がいる。その中でも前世?で主人公と恋仲であったような発言を示唆する少女アリスは物語を読む解く上で非常に重要な存在のように思える。

 

 

 

しかしながら、結局のところ本作をクリアしてもシンドロームの謎が完全に解けることはなかった。

 私は本作の主人公をバロックシンドロームの主人公である金沢キツネであると思い込み、彼に好意的な感情を抱いているアリスを渡辺ルビであると仮定した。

この説はおそらく、作品を隅から隅まで読み解けば間違いであることが分かるだろう。

けれども、誰がなんと言おうとも私の中ではそれだけが確固たる真実である。

 断片的に与えられた情報を意訳し、自らの物語――つまり自らのバロックに仕立て上げることこそが本シリーズの醍醐味だといえる。

ダークな世界観や、ゼロ年代特有の退廃的な世界観が好きなプレイヤーには是非遊んでほしいシリーズだ。

 

 

新作ポケモンのダブル云々

 

 

 

 

 

というわけでダブルバトルでマスターまでやってた。

パーティの雛形が決まってからは殆ど負けなかったのでコンセプト自体はそこそこ良さげ。 

 逆に細部は適当すぎるので到達時点のパーティを載せるけど、もし参考にするなら鵜呑みにせず色々変えたほうがいい。

 

 

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やりたいことはイエッサンブリムオンの並びでほぼ確定トリルを決めて後ろで殴るorラフレシアコータスでおさきにどうぞ→眼鏡噴火を決めるの二軸。

 

この指トリルを主軸にしたのは環境に『おいかぜ』や『ダイジェット』など素早さを上げる選択肢が多いことと、ウィンディエルフーンの叩きパをこの指で抑制出来るため。

その裏の択でコータスラフレシアなのは、トリルの後続をコータスにすることでラフレシアと組み合わせたときに別の軸でパーティが組めるから。この四枠は固定で残り二枠は選択枠って感じ。

 

 

 

 

ポケモン個別紹介

 

イエッサン♀ てだすけ/このゆび/サイキネ/トリック@サイコシード ずぶといHB

 

サイコメイカー+このゆびとまれが使える最強キャラ。

このゆびが優先度+2なので、優先度+3のねこだましが唯一弱点なんだけどサイコメイカーで先制技が相手に打てないのでこのゆびが確定で打てる。

ちゃんとやるなら襷持たせて控えめとかの方が絶対いいけど、今回はラフレシアに襷持たせたほうが強そうだったのでサイコシード持たせて雑に死ななそうな感じにしてみた。

 

 

 

ブリムオン サイキネ/トリル/マジカルシャイン/マジカルフレイム@球 れいせい最遅HC

 

トリルして殴る。それだけ。サイコフィールドがほぼほぼ貼られてるので火力がえぐすぎる。

トリルを確定させるだけなら、ヤレユータンミミッキュも強いんだけど、こいつはトリルした後そのまま相手にプレッシャーかけれるのでイエッサンとの相性はこいつが一番良さげ

技の通りがよさそうならダイマックス候補

 

 

コータス 熱風/噴火/だいちのちから/ソラビ@眼鏡 れいせい最遅HC

 

眼鏡で噴火する。

 

 

 

ラフレシア 眠り粉/ムンフォ/おさきにどうぞ/ソラビ@襷 おくびょうCS

 

ようりょくそが発動してる状態でドラパルトを抜きたかったのでおくびょう。

75%さえきちんと引ければねむりごなが最強技なので生き残ってるだけでゲームが壊せる。故に持ち物は襷。

出てるときが基本的に晴れ状態なのでどんなカスが打ってくる炎技でもまず間違いなく死ぬ。故に持ち物は襷。

 

 

 

ドラパルト アロー/鋼の翼/蜻蛉/大文字@拘り鉢巻 むじゃきAS

 

ダイマックス候補キャラ。

相手の砂パに対してラフレシアと並べて出して、先手とんぼ→コータス着地がしたかったんだけど、よくよく考えたら砂ドリュウズの方が早いことに気付いて素交替してたので持たせるならスカーフなのかもしれない。

そもそも最初はハバン持たせてたんだけど、後述の地雷ポケモンのせいで木の実が持てなくなったので適当に拘りハチマキ。

だいもんじは晴れ切れた状態でダイバーン打ってラフレシアを早くするため。

ここらへんはかなり改善出来ると思うので誰かやってくれ。

 

 

 

バンギラス 岩雪崩/噛み砕く/十万馬力/アイアンテール@チョッキ ゆうかんHA

 

ダイマックス候補キャラ。

コータスがどうあがいても炎(特にシャンデラ)に勝てなくてそこの補完。

ドサイドンが結構すぐ死ぬからバンギ入れたい→でも天候変えたくない→せや!『きんちょうかん』や!

というアホ丸出しの思考。持ち物含めてアホ感がすごいけど、バンギは腐ってもバンギだった

 

 

 

 

選出

 

トリル通せそうなら:イエッサン/ブリムオン/コータス/バンギ

 相手がトリル潰してきそうorこのゆびトリルの場合:ラフレシア/コータス@残り相手に合わせて二枠

 バンドリュが見えたら:ドラパルト/ラフレシア/コータス@残り一枠

 

 

 

基本はこんな感じ。ラフレシアコータスを選出するときに相手がオーロンゲ出してきそうな場合は前か後ろにイエッサン入れとくと相手の行動を縛れていい感じ

 

 

ベースのコンセプトは悪くないと思うんだけど、全体的に未完成感がすごいので続きは誰か完成させてくれ! 頼んだ!

 

 

 

 

ハッピーエンドを探さないで

 

 

※本記事は『ラジアータストーリーズ』及び『ライフイズストレンジ』に関する重要なネタバレを含みます。悪名高い前者はともかく上記の作品をプレイする予定の方は本記事を読まないことをオススメします。

 

 

 僕はゲームが好きなのでたくさんプレイしているのだけれども、多分同じくらいの時間ゲームについてあれこれ考えている。これはオタクの性分だと思うので仕方がないとは思う。

腐るほどあるゲームの中、ときおり思い出しては取りだして考えに耽るゲームがいくつかある。『ラジアータストーリーズ』はその中の一つだった。過去形なのはこのゲームが心に残した解れのようなものを完全に解消することが出来たからだ。

人間は忘れる生き物だし、折角なので解決に至った思考の道筋をここに書き記しておこうと思う。

長年僕を悩ませた『ラジアータストーリーズ』とそれを解く鍵となった『ライフイズストレンジ』というゲームについて

 

 

 

 

ラジアータストーリーズという『二人がここにいる不思議』

 

 

 

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結末にいくつかの派生があるゲームにおいて『ハッピーエンド』あるいは『トゥルーエンド』が用意されていることは昨今のゲームにおいては当たり前だと思っている。

実際の所、殆どのゲームには物語の核心に迫るルートが存在しているし、ユーザーもそれを前提にプレイしている節がある。だからこそ蓋を開けてみればそんなものは存在しない――マップの隅から隅を探し回っても何のフラグも立たない――と知ったとき、ユーザーは絶望するのだ。

ラジアータストーリーズ』が良くできた箱庭ゲーであったにも関わらずKOY2005の次点に選ばれてしまった要因は即死しやすいバトルシステムや面倒なタイムスケジュールシステムなどもあるだろうが、これが根本的な原因だろう。人は期待を裏切られたと知ったとき、罵詈雑言を吐くものである。可愛さ余って憎さ百倍という訳だ。

 

 

ラジアータストーリーズというゲームを知らない人に向けて簡単に説明する。人間と妖精(ゴブリン、エルフ、ドワーフなど)が危ういバランスで共存している世界が舞台となる。中盤以降とある出来事によりバランスが崩壊し二つの陣営が戦争になる。それに主人公とヒロインが巻き込まれていくというのが大まかなあらすじである。

本作には二つのエンドがある。グッドエンドやバッドエンドといった括りではなく対立するどちらの陣営に付くかによってその結末が変わる。要するに”人間側”か”妖精側”かということである。

 

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△二つのルートへの分岐方法はシンプルで妖精陣営に付こうとするヒロインを追いかけるかどうかの選択肢一つである。

 

 

 

 

 本作のエンドを簡単に説明するならば人間編は「世界は救われたがヒロインが死に、その傷心を癒すため主人公が旅に出る」一方妖精編は「ヒロインは救われたが人類は滅び、誰もいない街で二人が手を取り合う」と僕は解釈している。

 

この二つのエンドはどちらもハッピーエンドとは言えず、完全なバッドエンドとは言い切れないものの苦い後味の残る結末であることは間違いない。実際、リアルタイムでプレイしてた僕も人間編をプレイし「妖精編ならば救われるのでは?」と妖精編をプレイするも救われず、隠しボスまで倒した上で何もないことを知り絶望した。そうしてリメイク版の発売と共に第3のルートが出ることを期待したのは僕だけではないと思う。

しかしながら、不評なのもあってかその後このゲームのリメイクについて情報が上がることはなく、その後十年間、僕の魂は放射状を描いてさまよい続けることとなった。すなわち、ライフイズストレンジと出会うまでは。

 

 ライフイズストレンジという『永遠の夢』

 

 

 

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ライフイズストレンジについても未プレイの人のために説明をすると(出来ればこんな記事は閉じて今すぐゲームをプレイしてほしいけれど)時間を巻き戻せるようになった主人公の女子高生マックスが自分の身近に起きている事件を能力を用いて解決するという話である。

このゲームにおいてもエンディングが二つ用意されている。グッドエンドやバッドエンドといった括りではなく、友人(クロエ)を犠牲にするか、あるいは自分の生まれ育った町を犠牲にするかという二択になっている。

 

 

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△本作におけるエンディングの分岐の仕方もラジアータストーリーズと同じくシンプルだ。ゲーム内に様々な分岐点が用意されているがエンディングに直接かかわるのは画像の選択肢のどちらをプレイヤーが選ぶかのみである。

 

 

 

  

 初めて僕がこのゲームをクリアしたとき、必ずトゥルーエンドがあるだと確信し、そうして一日マップの隅から隅まで、章の最初から最後までフラグを立てようと躍起になってプレイした。しかしながら何の痕跡も見当たらず、観念してネットで調べてみると何もないということが分かった。絶望した僕は「なんで救われるエンドがないんだ?」と罵詈雑言を吐きそうになった。実際、多かれ少なかれこの作品に対する批判的コメントをいくつかしたように思う。そのくらい僕はこのゲームをプレイする上で愛着がわいていたし、二人に幸せになったほしかったのだ。

しかしながら、時間が経つにつれてそれが僕のエゴに過ぎないということが見えてきた。

 

 

順序が逆になってしまったがライフイズストレンジという物語についての話をしたいと思う。この物語は主人公マックスが数年ぶりに邂逅した友人クロエの銃殺されるシーンに居合わせてしまった所から始まる。

 

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前述した通りマックスには時を戻す能力が芽生えるため、クロエが殺される前まで時間を戻し彼女の命を救う。

 

 

 

数年ぶりに再開したクロエは髪も青く染め、腕には刺青を入れ、煙草も吸う手の付けられない非行少女になってしまっている。

 

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 しかしながら一緒にすごしていく間にマックスはクロエの根の部分は変わっていないことに気付く。彼女はマックスのいない間に実の父親を亡くし、母親の再婚相手の養父とはうまくいかず、親友のレイチェルは半年前に行方不明と彼女を取り巻く環境は散々だった。だから非行に走っていいというわけではないが、一人のティーンエンジャーがぐれる理由としては十分すぎるくらいだった。

 

 

マックスは親友のクロエに自分の能力を打ち明け、クロエはそれを利用して親友のレイチェルを探す手伝いをしてほしいと考え、マックスはそれを了承する。

その過程でクロエは変わっていく。マックスに何度も命を救われて、レイチェルがなぜいなくなったのかを知って、養父や母の気持ちを知って。

結果だけを話すのであればそれは上手くいく。レイチェルはすでに死んでおり、マックスの能力を用いて現実を”正しく捻じ曲げて”犯人を逮捕する。それで全てが丸く収まったかのように思えたがそうはいかず、マックスの住んでいる町に避けようのない台風が襲い掛かる。

マックスは本能的にそれを自分が能力によって現実を捻じ曲げたからだと理解する。そのことをクロエに話すと彼女は言う。

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この言動は依然の――マックスと再会する以前のクロエからしたらあり得ないことだ。髪染め、墨を入れ、煙草をふかし、養父に悪態ついていた彼女からは考えられないことだ。

 

端的に言ってしまえばこの物語とはクロエの成長譚に他ならない。主人公のマックスのスタンスは一貫して最初から最後まで変わらない。自分が常に正しいと思うことを行うだけだ。彼女は別にこの物語を通じて成長はしていない。何故なら、少し奥手なだけで彼女は初めから強い人間だったからだ。

 

だから、もしこの作品に原因の根本を解決するような都合の良いハッピーエンドがあったとすれば、それはクロエの成長を、この物語そのものを否定することに他ならない。

それは果たして物語としてのハッピーエンドなんだろうか?

 このことはラジアータストーリーズにおいても同じことが言える。人間と妖精が手を取り合う都合の良いハッピーエンドは果たして人間編における主人公ジャックの成長や、妖精編におけるリドリーの成長に勝るだろうか?

正直なところそれは分からない。けれども、第3のハッピーエンドを用意することでその二つのエンドが無価値になることだけは容易に想像出来る。

そう結論づけたところでラジアータへの思考の解れはなくなった。結局の所、僕にとってのラジアータへの疑問は「何故第3エンドがないのか?」ということについてだったからだ。