サイコパス謎解きゲーム『Rusty Lake』シリーズのすすめ

『Rusty Lake』シリーズは狂気に満ちたポイントクリック型の謎解きアドベンチャーゲームだ。

ゲームシステムはシンプルでマウスクリックによって手に入ったアイテムを駆使して状況を打破し、ストーリーを進めていくという至って普通の謎解きゲームとなっている。

では『Rusty Lake』の何が狂気に満ちているのか。何が魅力的なのか。本稿ではsteamで配信中の3作のうちの『Rusty Lake Hotel』と『Rusty Lake: Roots』の2作を紹介すると共に本作の魅力の根幹を伝えて行ければと思う。

 

 

 

Rusty Lake Hotel

 

f:id:fgctcgetc:20190719044930j:plain

 

 

 

『Rusty Lake Hotel』ではプレイヤーはホテルマンとなり奇怪な見た目をした宿泊客の相手をすることになる。

このゲームはsteamで配信されているシリーズの中で唯一日本語に対応していない。

だからといって敬遠しないで欲しい。むしろ僕はこのゲームは一切何を言っているのか分からない方が異世界に迷い込んだような不気味さをかえって良く味わえるような気がしている。実際に僕は英語がからっきしだめで本作のプレイ中も所々分かる単語があれど、殆どの文章を読むことが出来なかった。それでもクリアに辿り着くことが出来たし、少なくともゲームプレイに支障はないと思う。

 

 

f:id:fgctcgetc:20190719045748j:plain

我儘な宿泊客に『ブラッディーマリー』を用意しろ。とすごまれたので客の角をナイフで切って血液を採取している所。角切ってるのを許してるのもよくわからないし、ブラッディーマリーに血液使うのもよくわからない。こうした常軌を逸脱した行為の連続で、段々と倫理観と常識の平衡感覚が失われていく。

 

 

プレイヤーはホテルマンなので基本的には宿泊客の相手をし、顧客の要求に答えていくことになる。しかしながらホラーゲームの定番のように一人、また一人と客の姿が消えていく。周りが何を言っているのか一切分からなくても、”何故宿泊客がいなくなったのか”は実際にゲームをプレイしてもらえれば一目で分かることだろう。

 

 

 

 

 

 

Rusty Lake: Roots

 

『Rusty Lake: Roots』は上記のHotelの続編にあたるゲームだ。いかにしてあの奇怪なホテルが誕生したのかといった”ルーツ”を一つの家系図を辿って間接的に知ることが出来る。

このゲームはHotelのように奇怪な見た目をした人物達を相手にすることはないが、前作以上の狂気を相手にすることになる。例えとして一つあげると『想いを寄せてる女性に薔薇を上げたら鼻血を出したのでハンカチで拭い、その血でカラスの羽根を使って恋文を書く』といった具合だ。

 

f:id:fgctcgetc:20190719201705j:plain

※インクではなく血液です。

 

こんなものは序の口である。行っていることの残虐性や暴力性としては前作のhotelの方が高いのだが、生身の人間が行っているというビジュアル的観点から見ると本作の方がショックを受ける可能性が高いかもしれない。

 

 

f:id:fgctcgetc:20190719213023j:plain

突然現れた男性の死体。脇腹の部分に矢印のようなマークがついているが… 

 

 

 

『Rusty Lake』シリーズの面白さについて

 

 

本来ポイントクリック式の謎解きゲームにおいて最も楽しさを覚える部分は「アハ体験」にあると僕は考えている。アハ体験とは簡単に言えば「あっ!」という閃きのことで「今まで分からなかったことが分かるようになる体験」のことである。パズルゲームや謎解きゲームはこういった体験を誘発させる場であるといえると思う。

例えば『Gorogoa』なんかは「アハ体験」の連続でプレイヤーの体験を満たすゲームであるといえる。

 

youtu.be

 

 

しかしながら『Rusty Lake』シリーズは違う。それがこのゲームの面白く、また狂気に満ちた部分だ。

『Rusty Lake』シリーズで最もプレイヤーが楽しさを味わう部分は「背徳感」にあると僕は考える。上記の通り殆どのパズルゲームや謎解きゲームは「解けなかった問題が解けた」ときの爽快感にある。それは「気づけた!」という感情だ。しかしながら『Rusty Lake』シリーズはプレイしていくうちに謎を解いても「気づけた!」という感情に至っていないことに気が付くと思う。このゲームの場合謎を解いた後の感情は「気づいてしまった」なのである。

 

それはいったいどういうことなのか? 

普段、僕は自分の声など気持ち悪いし1mmも聞きたくない人間なのだけれど、僕が『Rusty Lake: Roots』を実況配信していた際にこのゲームの魅力を表すのに最も相応しい動画が取れてしまったので参考までにここに掲載させて頂く。

 

youtu.be

 

 

この動画にこのゲームの魅力が全て詰まっているように思う。

特に胎盤を犬に食べさせるシーンはこのゲームをプレイし続けた人間なら今までの経験則から瞬時に気が付いてしまうのだ。

「なんで犬に胎盤食わせたら眠って鍵が取れるようになるの?」なんて知ったことではない。ただ瞬間的に「犬に胎盤を食わせたら鍵が取れる」と理解するだけだ。そうして気が付いてしまった自分にある種の自己嫌悪を覚える。

 

「このゲームの作者、サイコパスだろ…」と若干ひきながらゲームをプレイしていた自分がいつの間にか作者の考えを無意識に理解してしまう。プレイヤー自身がこのゲームのルールに順応し、サイコパスになってしまう。このゲームの素晴らしいところはそこにある。