『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』はファンの期待を裏切った最低な作品だが、それでもファンに観て欲しい最高の映画だった

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ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は人類史上稀に見る最低最悪の映画だった。

一人のドラクエファンとしてそう表現したい気持ちは分かる。確かに8/2に封を切られたこの作品を何も知らないまま観た人間は紛れもなく犠牲者だろう。けれどもそれ以降に「どうやら何かあるらしい」とこの映画に対して身構えながら鑑賞したもの達もが口を揃えて「この映画はクソだ。絶対に観に行くな」とSNSに書き込むのは些か大人げないと言わざるを得ない。

 

 

 

当記事では『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』について”僕がしても構わないと独断で判断したネタバレ”を含みながら本作の魅力について語る。

もし、あなたが世間の評価に流されドラクエファンでありながらも本作を絶対に観に行かないと固い決意をしているのであれば、この記事を読んでから判断して欲しい。あなたが本作に最低最悪のレッテルを貼り一生開かぬよう封をするのはそれからでも遅くないはずだ。

 

 

 

何故『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』はここまで非難の嵐を受けているのか

 

 

当然の事ながら世の中には面白くない映画など数えきれない程に存在する。テンポが悪い、画面が暗くて見えづらい、単純にセンスが感じられない。理由はたくさんだ。これらの映画は大抵面白くないが故に語られないという罰を受けてこの世から消えていく。

しかしながら本作に関しての観客の反応は異なる。怒りだ。何故そのような激情を皆が覚えるのか。その理由は多種多様だが一つだけハッキリしていることがある。本作が”純粋に面白くない映画”ではないということだ。先にも述べた通り単純に面白くない作品はただ単に語られないのだ。怒りを覚えるということは何らかのひっかかりがあるということである。

 

 

ここで一つ断り書きをさせて頂く。文頭に書いた”僕がしても構わないと独断で判断したネタバレ”というのは本作の批判部分の話である。

SNS等で散々騒がれているのでこれを読まれている皆さまは既に気づいているかと思うが、本作は物語の終盤にとんでもないどんでん返しがある。それがこの作品の評価を賛否両論(否の意見が圧倒的に多いが)へと推し進めている。

逆にそれ以外の本作の魅力については極力ネタバレなしで語り切りたいと思っている。僕が良いと思った部分を出来ればこれを読んでいる皆さんにも僕と同じように新鮮に感じて欲しいからだ。

 

 

さて、それでは本作のどんでん返しについて話をしよう。一言で述べるなら「本作はドラゴンクエストVの映画ではなかった」ということになる。

一体どういうことなのか? 筋道を立てて話をする。

映画は多少の改変や割愛した部分がありながらもドラクエVのシナリオ通り表世界のラスダンである大神殿へと向かう。

本来魔界のエビルマウンテンでゲマとの最終決戦を行うシナリオだが本作ではこの大神殿が最終舞台となる。主人公は息子と協力しゲマを倒すと、天空の剣を魔界の門へと投げ込む。本作の設定では天空の剣を魔界の門へと投げ込むと門を閉じれる設定となっているのだ。

事件はそこで起きる。主人公以外の全ての物体の時間が止まるのだ。物も他のキャラクター達も一切動かなくなる。

そこに突然謎のキャラクター(以下白ハゲとしよう。白ハゲなので)が現れる。

白ハゲは自分がハッカーによって送り込まれたウイルスであり、この世界がプログラムに過ぎないと話す。

そして主人公の記憶を呼び覚まし、シーンは主人公の回想へと移る。自分がドラゴンクエストV追体験出来るVRアトラクションに入っていく姿。アトラクションの監視員と「このゲームをプレイ中は一切自分の記憶がなくなり作品に没頭出来る」と会話する姿。

即ちこれまで僕らが見せられていた映画は『ドラクエV』ではなく『この映画の主人公がドラクエV追体験VRアトラクションをプレイしていた様』だったのである。

白ハゲは「私を作ったハッカーはこう言いたいのだろう。『早く大人になれ』と」と口にしてVR世界を全て破壊しようとする。

 成す術もなくやられそうになる主人公だがスライムの姿をしたアンチウイルスソフトが現れウイルス対策プログラムを主人公に託す。

主人公に託されたプログラムはロトの剣の形となる。走馬灯のようにドラクエVをプレイした思い出が脳内を駆け巡りながら「誰になんと言われようとゲームキャラクターも僕にとって現実の一つだ」という想いを胸に白ハゲを倒す。

瞬間、VR世界は元に戻りイレギュラーによって現実の主人公の記憶を持ったままという不具合を抱えたままではあるが、無事VRアトラクションは終わりを迎える。

 

 

 

 

 いやね! 僕は確かに「文句を言うな」と。「批判ばっかすんな」と。言いましたけどね、これだけは言わせて欲しい。「このシーン、間近でセンスがねーんだよ!」

僕はねこういうメタフィクション系統の作品、大好きなんですよ。ゲームは大好きだし。ゲームも現実の一部だと考えてる。でもとにかくセンスがない。このやり取りがもう死ぬほど寒い。実際見て貰ったらわかるんだけど、もう本当に鳥肌立つから。

まあでも、ここで「じゃあどうしたらよかったのか?」みたいな話はしません。それはこの記事の本懐ではないので。なんならこのクソ寒いやり取りが”怒り”を生み出したのかって言われるとそうじゃないとも思うので。

 

 

じゃあ何が怒りを生み出したのか? っていう話なんですよ。それは僕個人が思うにこの作品が”本当に面白かったから”だと思うんですよ。少なくともこのクソ寒いやり取りが行われるまでは。

そうして人間は考えてしまうわけです。本来、こんな余計な設定(と今回は言わせて頂きます)を付け加えずにこの映画が完結していたならば、どんなに素晴らしかっただろうと。本来得れたはずの面白さとの落差にしか目が行かないわけです。

僕はこの映画の点数を100点満点中70点としました。実際平均で点数を出したときにこれは妥当な数字だと思います。だってラスト以外最高に面白いんだから。

 なんならこのスコアの付け方もラスト前まで100点満点中270点だったけどラストで200点マイナスした、みたいなそんな感じの付け方なんですよ! 確かにあのラストはマイナス200点をつけたくなるくらい酷い。でもそれでそれまでの全てを無かったかのように、この映画がドラクエのことは一切分かってないみたいな書き方をするのは違うと思うんです。

本当にいいんですよ、この映画。まず映画館ですぎやまこういちの曲が流れるだけで5億点くらい渡したくなるし、ネタバレ極力したくないとか言いつつもう言いたくなったんでバンバンしますけど、リュカがヘタレキャラなのもすごくいい。だってあいつ原作でもルイーダの酒場に預けられないから仕方なく馬車の中でベホイミ唱えてるだけじゃないですか! ゲームやっててもピエールとブラウニーとゴレムスがずっと前線にいるし、めっちゃ俺の想像通りなんですよね。

ビアンカはシリーズのビアンカの中でも屈指の可愛さだし、フローラもものすっっっごくいいんですよ。

そして数多のモンスター達。これはネタバレでもなんでもないんですけど、作中に出てくるギガンテスにね、ちょっと泣きそうになっちゃんですよ。

ドラクエ11をやってる時に「俺、なんでこんな面白くないゲームやってんだろ」ってちょっと思ったんですよね。面白いアクションRPGがいっぱいある中で、ドラクエ11は言ってしまえばコマンド選択式の時代遅れのRPGなわけじゃないですか。

それでも最後までプレイして、なんでここまでやったのか理由は結局わからずじまいだったんですけど、この映画観てて心の底からわかったんですよ。このモンスター達のいるゲームが僕はしたいんだなぁって。ここまでくると老害だと思うし、それは承知してるんですけどね。そこまで感じることはないにしても、ラスト以外の部分は本当に面白いし、あれは出来れば映画館で味わってほしいと思う。確かにクソ映画かもしれないけど、僕は自信を持ってドラクエファンにこの映画を薦めたい。

 

ただラストで、もう喩えるなら「最高の映画を観終えた」と思ったところにテロリストがやってきて10分くらい恐怖体験を味合わされる、みたいなことが起こるんで、それはちょっと覚悟して貰いたい。結果この映画のことを嫌いになっても別にいいから! 別にこの作品を評価してくれなんて微塵も思ってねぇから! ただドラクエファンにドラクエの映像と音楽を劇場で楽しんでもらいたい、僕の想いはそれだけです。